世界一気持ちいい場所


 世界一気持ちいい場所ってどこ? と聞かれたら、どんな場所を思い浮かべるだろうか。ひとそれぞれ、実際に行ったことがある場所、あるいはテレビや本などで知った「一度は行ってみたい」憧れの場所を思い浮かべるに違いない。

 御嶽山の中腹、標高 1800 メートルに位置する濁河温泉。夏の気温は 22℃ 前後と快適で、深い針葉樹の森に囲まれているので水も空気も新鮮でおいしい。ホシガラス、キバシリ、など珍しい野鳥もいる。春先から夏にかけては、ウグイスやトラツグミの声も谷間に響き渡る。

 周辺は御嶽山の噴火によって形作られた熔岩などから成る複雑な地形なので滝が多く、岩の隙間から漏れ出てくる温泉が川の水に混じり、流れ下る急流はかすかに濁っている。そこから「濁河」と呼ばれるようになった。

 この谷間に摂氏 48 度ほどで湧き出す温泉は素晴らしい。僕はマニアといって良いほどの大の温泉好きなのだが、静かな大自然の中で森林浴と温泉浴を同時に楽しみながら心身共にリラックスできる場所としては、濁河の露天風呂が世界一ではないかと密かに思っている。

 早朝、まだ日が昇る前、辺りに薄い霧が立ちこめる中、適温の湯に体を浮かべるときのちょっと言葉にできないほどの解放感・・・。天にも昇る、というのはまさにこの気持ちだろう。だから僕はここを、世界一気持ちいい場所 The most soothing place on earth … と呼ぶ。

 写真ではもちろん「気持ちよさ」を味わってはもらえない。でも想像力を最大限に働かせれば、つまり鳥の声とか、朝のピリッとした空気感とかを思い浮かべると・・・、ほら、あったかい温泉がじんわりと体に染みこんでくるような感覚があなたにも・・・。

 濁河温泉の泉質:
 ナトリウム・カルシウム・マグネシウムを含む炭酸水素塩・硫酸塩温泉。

 名前は長い。それだけ多くの成分が溶け込んでいるということ。ちょっと口に含むと、微かな鉄味と炭酸味があり無色透明だ。浴槽にたまると、茶色や薄緑色などに濁ってくる。新鮮なときは微妙に黄褐色がかかってはいるがほぼ透明。

 お湯が濁っているのをありがたがる温泉ファンは多い。しかしどこの温泉でも、地下から湧きだしたときはほぼ確実に無色透明である。ミネラル分はお湯の中にしっかり溶け込んでいるので、微妙に色がついているだけで、濁っていることはまずない。

 実を言うと、温泉が濁るのは、空気に触れたり撹拌されて酸化するからだ。つまり、温泉がその鮮度を失って「疲れて」しまった結果なのだ。湧きだしたばかりの新鮮な温泉は酸化還元電位(ORP)が低い状態であり、つまり「還元系」である。この還元系の温泉には、私たちの体が酸化するのを抑えてくれるアンチエイジング効果があると言われている。

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