この時期の星空観望会における最大の目玉は、31センチ望遠鏡で見るM42(オリオン大星雲)。
晴れた晩には放射冷却で気温が下がり、屋上テラスが-15度以下になることも珍しくない。それでも標高1800メートルで眺める冬の星空は素晴らしく、空を見あげた瞬間に驚きの声を上げるお客様が多い。
ドームの外に出て南の空を見ると、オリオンの足下にひときわ明るく青白い光を放つ星がおおいぬ座のシリウス。マイナス1.46等星だから、2位を大きく引き離して全天で一番明るい恒星だ。なぜこんなに明るいかというと、地球からの距離が8.58光年と非常に近いから。
僕はHNKの人気番組『コズミックフロントNEXT』を欠かさずに見ているが、今週の番組では、このシリウスを巡るいくつかの謎を扱っていた。なかなか楽しかったのでちょっとご紹介。
このシリウス、実は小さな伴星を持つ連星で、明るいシリウスAのすぐそばにはシリウスBという白色矮星がある。このシリウスBの明るさは8.4等なので、理論上は口径300mm以上の望遠鏡で十分見えるはず。しかし我が旅館御岳天文台の310mm望遠鏡でも、見えるのはひと冬で数えるほど。空が澄んで風が無く、条件に恵まれた晩でないと見えないのだ。
シリウスAとBは、約50年の周期でお互いに複雑な軌道上を公転している。そして今後10年ほどは、二つの星の距離が離れている。そのため、明るいシリウスAのすぐそばにある暗いシリウスBを見るには絶好のチャンスだ。
シリウスAの直径は、シリウスBのほぼ100倍。並べてみるとだいたいこんな感じ。写真はネット上で見つけたものだ。
そして全くの偶然なのだが、白色矮星であるシリウスBと我が地球とは、この想像図のように大きさがほとんど同じなのだ。恒星なのに大きさが地球と同じ?! それはシリウスBが白色矮星だから。こんなに小さいのに、質量は我が太陽とほぼ同じ。だからものすごく密度が高く、角砂糖一個分で重さが1トンもあるという。