謎の小惑星 ファエトン

星空&宇宙

 今年も「ふたご座流星群」の季節がやってきた。12 月 14 日の 21 時ごろ、出現の極大を迎える。上弦の月が夜半には西に沈むので、15 日未明にかけて理想的な条件で流星観察ができる。もちろん本年最大の流星イベントであり、1 時間あたりの出現数を専門家は 70 個と予想している。

 毎分 1 個以上の出現が期待できそうで非常に楽しみなのだが、今回はふたご座流星群をよりエキサイティングにする「とっておき情報」を特別に(というほど大したものじゃないけど)ご提供。


画像:国立天文台天文情報センター

 さて、以前も紹介したように、ぼくらが目にする流れ星(流星)は、いわゆる「星」ではない。宇宙空間を漂う小さな塵や砂粒、大きくても小石ほどのかけらがその正体だ。そのほとんどが重さ 1 グラム程度で、10 グラムもあれば大きな方。これが時速 15 万キロ以上という途方もない速度で地球の大気圏に突入し、上空 100 km 付近で大気との摩擦で燃焼し蒸発するときに明るく光るのが流星だ。

 つまり「ふたご座流星群」の時期には、地球の周りに塵や砂粒がいつもよりたくさん漂っていると言うこと。なぜそんなことが起きるのだろう。ここで登場するのが、今回の主役である謎の小惑星ファエトン(Phaethon)だ。


画像:国立天文台天文情報センター

 ふたご座流星群の「母天体」である小惑星ファエトンは、塵や小石を(たぶん現在も)まき散らしながら太陽の周りを一定の軌道で公転している。その軌道に、毎年この時期になると地球が接近する。そして(見かけ上)ふたご座の方向に、流れ星が大量に出現するというわけだ。

 えっ、ちょっと待ってよ! 流星群の母天体は「彗星」と相場が決まっているのに、なんで小惑星が母天体なの? ご存じのように、長い尾を引いて太陽に接近する彗星は岩石や氷でできていて、太陽に近づくとその熱で氷が溶け、少しずつ壊れて塵や岩石をまき散らす。それが流星の素になる。

 しかしファエトンは、彗星ではなくて小惑星・・・。活動が認められる流星群は一年間に 30 以上あるが、母天体が小惑星なのは、ふたご座流星群のファエトンだけ。しかもそれが、年間を通じて最大の出現数を誇る流星群なのだ。

 おそらくファエトンは、元々は太陽系の外縁にあるカイパーベルト辺りから太陽に接近してきた彗星だったものが、惑星などの引力で軌道が変化し、比較的公転周期の短い小惑星になったものと見られる。

 実際のところ、小惑星も彗星も組成に大きな違いがあるわけではない。しいて言えば、太陽の熱によって物質をまき散らすのが彗星で、まき散らさないのが小惑星というくくりだ。まあ、ファエトンは「昔は彗星だった小惑星」といったところか。

 このファエトン、公転周期がたったの 1.43 年なので、けっこう頻繁に地球に接近する。地球近傍小惑星の中でも特に PHA(潜在的に危険な小惑星)に指定されている。ほぼ球形で直径は 6 km もあり、もし地球に衝突したら大惨事なんてもんじゃない。今から約 6500 万年前にファエトンと同じくらいの小惑星が地球に衝突し、それを原因とする気候変動(寒冷化)によって恐竜がすべて絶滅してしまったのは有名な話だ。


画像:「秒刊SUNDAY」より

 PHA に指定された小惑星は特別に警戒の対象となっており、ファエトンの場合は 2093 年 12 月 14 日に地球から 291 万 km まで接近するという予測が出ている。したがって前触れもなしに突然地球に向かって突進してくる、なんていう危険性は万が一にもないだろう。でも人間にミスや見落としはつきものだ。天文学者たちが何か重大な計算ミスを犯していなければいいけど・・・。

 今年のふたご座流星群も、そんな危機感を持ちながら見ればスリル満点で楽しみが倍増するかもしれない。それともゾッとして「寒さが倍増」するかな。

◆ 追加情報:
 2013 年に彗星状の尾が発見され、ファエトンが今もなお活動していることが明らかとなった。