旅館御岳の周辺には美しい滝がたくさんある。なにせ濁河温泉のある小坂町(現在は下呂市に併合されている)には、「飛騨小坂200滝」というNPOがあるほど。旅館のフロントで宿泊客に無料配布している周辺地図にも、近くで見られる滝がいくつか載っている。
その中でも、規模が大きくて見事な上にアクセスが良くてお勧めなのが「仙人滝」だ。
冬は雪が深くてなかなか行けない仙人滝。かんじきを履いて行く「氷瀑ツアー」の目的地にもなっている。しかし雪さえなければ、登山道の入口からほんの15分ほど歩くだけでその姿を見ることができる。
五月も中旬になって登山道の雪も溶け、そろそろ山歩きを気軽に楽しめるシーズンの到来。安全状況を確認する目的もあって、仙人滝に行ってみた。
数軒の旅館が建ち並ぶ濁河温泉街の中ほど、車道から右手に「白糸の滝」が見える。写真の左手から流れてくる濁河川の本流に、写真上方からの支流が合流している。大きく広がっているので、僕なら「扇の滝」と名付けたいところ。
これが登山口。簡易トイレと入山カードのポストがある。車で来られるのはここまでだ。目線の先には、御嶽山にいくつかあるピナクルの一つである摩利支天山が見えている。
濁河川にかかる橋を渡ると御岳神社の鳥居が見える。その脇を通って登山道へ。
なだらかな山道をゆっくり登って行くと、間もなく仙人滝への分岐に出る。ここまで来れば仙人滝はすぐ目と鼻の先。
こんな木の橋を渡る・・・。
左手の岩肌には苔がびっしり。したたり落ちる小さな滝を見ながら進むと・・・。
落差30メートルの仙人滝に到着。
かなりの水量で豪快に流れ落ちているが・・・。
滝壺からの水音は意外と静かで、辺りの風景に滝が溶け込んでいる感じ。滝から少し離れるとあまり水音は聞こえず、腰掛けて周囲の雰囲気をゆっくりと楽しむことができる。僕の勝手な想像なのだが、滝の流れ落ちる様子が仙人の立ち姿に似ているところから命名されたのかもしれない。それとも、ここにしばらく座っていると仙人になったような気分が味わえるからだろうか。
仙人滝への行き帰り、薄暗い木陰にバイカオウレン(梅花黄蓮)の群生をいくつも見つけた。御嶽山麓では五月から六月にかけてよく見られる。小さな花だが、まだ他の花が咲いていないのでその白さがよく目立つ。
五枚の花弁のように見えるのは、実は萼(がく)片であり、真ん中の部分が花である。なんとも清楚で可憐な花。自生地は日本中にあるが、ネットで調べると御嶽山で見られるバイカオウレンは特にガク(花弁のように見える部分)が丸っこいようだ。植物の姿は、自生する地域によって微妙に違っているのが楽しい。