チャオ御岳スノーリゾートから濁河温泉へ向かう県道435号線で、乗鞍岳のすぐ左肩に笠ヶ岳が見える場所が一箇所だけある。随分尖って見えるので、最初に見たときは槍ヶ岳かと勘違い。でも地図に物差しを当ててみると、槍ヶ岳は完全に乗鞍に隠れて見えないはず。それで笠ヶ岳だと気がついた。
笠ヶ岳の標高は2898メートル。表銀座とも称される穂高連峰から少し離れて西側にある独立峰で非常に目立つ。北アルプス登山の経験者でこの山を見たことがないという人はまずいない。しかもその名の通り笠を広げたような美しい姿で、もちろん日本百名山の一つ。
『日本百名山』の中で深田久弥は、『笠ヶ岳という名前の山は全国に沢山あるが、どこから望んでも笠の形を崩さないのは北アルプスの笠ヶ岳だけであり文字通りの名峰「笠ヶ岳」である。』と書いている。僕はこの山を、南側、つまり御嶽側から、さらに東側(穂高岳側)、そして西側(高山市側)から見たことがあるが、本当にどの方向から見ても美しい山だ。
ところが、槍穂高にはかなり慣れ親しんだ僕も、残念ながら笠ヶ岳に登る機会は今までに無かった。深田久弥も『北ルプスを登って笠ヶ岳を見落とした人はあるまいがその頂上に立った人は案外少ないようである、それは通常の縦走路から大きく外れているからである。』と書いている。
足腰がこれ以上衰える前に、ぜひ一度、双六岳から、つまり北からの笠ヶ岳を見てみたいと思っている。新穂高温泉から沢を詰めて双六岳を目指し、双六小屋で一泊して帰りは南に縦走して笠ヶ岳頂上に登ってから下山するというコースがいいかな。娘夫婦が、最近になって登山を始めたようなので、手を引っぱってもらって今年の夏にでもトライしたい。