2018年4月16日 開田高原 – 信号機の意外な真相

 先週の雪で少しだけ冬に逆戻りした濁河温泉だが、そこはやはり四月の半ば。14日の大雨で御嶽山周辺の雪解けが一気に進んだ。谷筋には雪が残っているが、特に風の強い継子岳の稜線付近ではだんだん岩肌が露出してきている。

 冬の間は氷に覆われて見えない「女の滝(めのたき)」も姿を現した。雨が降った翌日にはグンと水量が増すなかなかきれいな滝。旅館の真裏にあって道路からは全く見えない。雨が降った後の数日間だけ見られる「幻の滝」でもある。

 まだかなりの積雪量があるチャオ御岳スノーリゾート。朝は8時前からリフトが営業している。平日にもかかわらず、去りゆく冬を惜しむスキーヤーやスノーボーダーの姿が。御嶽山麓は他のスキーエリアが滑走不能になってからも最後まで雪が残るので、東海、関西方面からのスキー客が、五月の連休明けまで訪れる。

 山を下りて開田高原へ。西野地区から振り返ってみた御嶽山。西野川を渡る橋の上から撮影。

 川の上流はこんな感じ。岩魚が棲む西野川は澄みきって冷たい。野焼きの跡も見える。穏やかな山里の春という雰囲気だが、開田村の冬は気温が-20度を下回ることもあって非常に厳しい。冬季の気象情報では、北海道の旭川より低い(つまり日本一寒い)と報道される日もあったりする。僕の記憶では-32度という日も一昔前にはあった。

 九蔵峠の展望台から御嶽山を望む。御嶽山といえばこの姿というくらい「お決まりの構図」。どアマチュアの僕でも、この構図で写真を撮るのが恥ずかしいほど。ちょっとおもしろい形の雲が出ているとか、噴煙が上がっているとか、多少はアクセントが欲しい。今日は噴煙も全く見えず、実に穏やか。

 旧開田村役場。現在は木曽町の開田支所となっている。標高はこの辺りでも1108メートル。夏でも気温が28度を超えることはまずない。

 開田村と聞いて僕が思い浮かべる典型的な風景。こうした雰囲気が気に入って移住してくる若い芸術家や工芸家がけっこういるらしい。美しい風景の中で彫刻とか陶芸をしたくなる気持ちはよく分かる。珍しいところでは、星空の美しさに惚れ込んで都会から移住して自宅に天文台を作ってしまった知人もいる。

 平成の大合併で今では木曽町の一部になってしまったが、開田村は「日本で最も美しい村」でもあった。僕は、開田村が自分からそう名乗りを上げたのかと思っていたが、調べてみると「日本で最も美しい村」連合という組織があって、全国で63もの町村が加盟していることが分かった。なあんだそうだったのか。

 開田高原の末川地区には、国道361号に設けられた「開田高原西」という名前の信号がある。写真のようにすごく見通しの良い場所に突然現れる信号機。交差している(非常に交通量の少ない)道を一時停止にするだけで十分。なんでこんなところに信号機を設けたのか以前から不思議に思っていた。

 最近になって意外な噂を耳にした。この信号機、実は「教育目的」で設置されたものだという。そう言われてみれば、開田村にある信号機はこれ一基だけ。面積の広い村だが他に信号機は一つもない。それで、木曽福島町から開田村へ抜けるトンネルができたときに、開田村の小学生や中学生に信号付き交差点の渡り方を教える目的で作ったというのだ。

 「まさかそんなこと!」と思った僕がさっそく調べてみると、全国には(離島などで)そうした安全教育目的で設置された信号機が実際にあるらしい。真相を確かめるために開田支所に電話をしてみた。すると、「当時の担当者がすでに退職しているので信号機設置の理由は不明」とのこと。係の人の推測によると、トンネル完成と共に広い直線道路ができたので、スピードを抑制する目的があったのかもしれないと言う。

 いずれにしても、この信号機のおかげで開田村は「信号機の一つもない村」と言う汚名(?)を免れた。しかし今となっては、「信号機の一つもない村」はとても魅力的な売り文句になったのにと思ってしまう。

 信号機の近くには水生植物園や水車小屋などもあり、白樺林の点在する明るい田園風景が広がっている。この辺りは空が広く、開田高原の中でも特にすがすがしい場所だ。

 さて、木曽町にある我が家の庭では、バラより一足先にミツバツツジ(三葉躑躅)が咲き始めている。

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