5月
新月は15日: 21時頃に満天の星空が見られるのは8日から18日頃まで。
月面の観望好機は20日~25日の数日間。
6月
新月は14日: 21時頃に満天の星空が見られるのは7日から17日頃まで。
月面の観望好機は19日~24日の数日間。
前回のこのコーナーでは、北斗七星(おおぐま座)のひしゃくの柄を延ばした先に、うしかい座のアークトゥルスとおとめ座のスピカを見つけた。今回はその「おとめ座」のギリシャ神話と話題のM87銀河についてご紹介。
もう一つ、かに座についてもちょっと触れる。この時期の天頂付近には春の夜空の主役であるしし座が居座っているが、そのすぐ東側にある小さな星座が「かに座」。かに座には有名な散開星団プレセペ(M44)があり、肉眼でもうっすらと見える。
おとめ座
人間の善と悪を計る正義の女神アストレアの姿。人間は、最初は十分に食料のある恵まれた環境の中で幸福に暮らしていた。しかし人間たちの間に欲望が生まれて次第に争いが増えると、多くの神々が愛想を尽かせて天上に昇ってしまった。そうした中でアストレアは最後まで人間界に残って正義の分量を計っていた。
しかし遂に人間が殺し合いをはじめ、天秤の邪悪側が次第に重くなり、最後には下がりっぱなしになった。それを見たアストレアも遂に諦めて天上界に帰った。おとめ座に続いて東から昇ってくるてんびん座は、彼女が使っていた正邪を計る天秤。
α星のスピカの他には明るい星がほとんどなく、星の配列から女神の姿を見出すのは難しい。スピカは女神アストレアが左手に持っている麦の穂先である。スピカは古代ギリシャ語で「尖った物」という意味で、英語のスパイクと同じ語源だ。麦の穂先が尖っているから。
このスピカ、日本では昔から真珠星と呼ばれている。距離が260光年とかなり遠いため、一等星の中ではあまり明るい方ではない。しかし実際は直径が太陽の8倍、明るさは13000倍という巨大な恒星。二つの星が光速で自転しながらお互いの周りを回っている連星でもある。
上の写真はおとめ座にあるM87。我々の天の川銀河から約5500万光年のかなたにある大型の銀河だ。条件が良ければ旅館の屋上にある望遠鏡でもその光芒を見ることができる。この銀河の中心には太陽のなんと60億倍の質量を持つブラックホールがあり、その中心から長さが5000光年もあるジェットが吹き出していることで有名だ。
かに座
ヘラクレスはミュケーナイ王エウリュステウスに12の功業を命じられた。その一つがヒドラ退治。ヒドラがヘラクレスにやられそうになったのを見て、ヒドラの友達だった蟹カルキノスが助太刀に。しかしあっけなく踏みつぶされてしまった。友達のために自分の身を省みず戦った勇気がたたえられ、明るい星が一つもないのに黄道十二星座のひとつになっている。
かに座にあるプレセペ星団(M44)。英語では「ビーハイブ」(Beehive 、蜂の巣の意)と呼ばれる。この天体が200個以上の恒星の集団であることを発見したのはガリレオ・ガリレイ。それ以前は星雲だと思われていた。距離は約580光年、星団の年齢は約7億3000万年と古く、赤や青、黄色の星が混在している。
木星とその衛星
山深い旅館御岳の天文台でも、今月からようやく木星が見られる。今年の木星はてんびん座にあり、マイナス二等の明るさで輝きながら御嶽山の上に昇ってくる。望遠鏡で覗くと、四つのガリレオ衛星が毎日位置を変えながら回っている様子や、木星本体の縞模様を観察することができる。