火星が接近中! – ローウェルの“オカルト・ジャパン”(Percival Lowell – Occult Japan or The way of Gods)


画像:NASA

 今年も火星接近の時期になってきた。10月6日に最接近するが、今年はそれほどの大接近でもないので盛り上がりは今ひとつ。上の画像は、2018 年 7 月の大接近時に NASA が撮影した火星表面の様子。現在では、火星の表面は細かい地形まで判明している。


画像:Wikipedia

 話は変わって二十世紀はじめごろのこと。イタリアのスキアパレッリという天文学者が、火星表面に線のような模様があるのを発見した。彼が残したスケッチには、上の画像のように人工的とも見える直線が描かれており、中には二本の直線が平行になっているものもある。

 「こんな人工的な図形が自然にできるはずは絶対にない。つまり誰かが作ったに違いない。」という結論になった。実際、天文学者の中にも「火星人が造った運河」だと考える人が多かった。ほんの 100 年前のことである。


画像:NASA

 これが最新の火星画像。今では、火星に「運河」など存在しないことは誰でも知っている。NASA は「Mars Trek」という火星のインタラクティヴマップを公開していて、ネット上で Google マップのように火星を自由に探検することができる。クレーター等の地形を拡大表示することも可能だ。そこで偶然見つかるおかしな地形が「人工物だ!」とか「人の顔だ!」とか、ネット上で話題になって、けっこう盛り上がっている。興味のある方はぜひお試しを。


画像:NASA

 アメリカが打ち上げた探査ロケットも火星に着陸しており、表面の様子や気象条件なども詳細に分かってきた。もちろん火星人はいるはずもない。どうやら極地に氷がわずかにあるらしいのだが、有機物が存在するのかはちょっと怪しくなってきた。


画像:Wikipedia

 これは、アメリカ人天文学者パーシヴァル・ローウェル(Percival Lowell)が 1895 年に出版した「Mars(火星)」という本に載せた火星の地図。50 年前にこんな地図を見せられたぼくらの年代にとって、「火星には火星人が住んでいる」という話はかなり現実的だった。


画像:Wikipedia

 アリゾナ州フラッグスタッフに、惑星観測のメッカとして有名な「ローウェル天文台」を設立したパーシヴァル・ローウェルは、多少なりとも天文学をかじったことがある人なら誰でも知っている高名な天文学者だ。そんな大学者が「火星には運河がある」と言えば、当時としてはかなり説得力のある情報だった。しかも彼は著書の中で、「火星の引力は地球の三分の一しかないから、火星人の身長は我々の三倍はあるだろう」と大真面目に書いている。

 その後ローウェルは、計算結果から海王星の外側にさらに惑星があることを予測し、それに従って観測したアメリカ人研究者が、本当に冥王星を発見するという業績につながるなど、近代天文学に大きな貢献をした大学者だ。

 さて、前置きが長くなったが、ここからがこの記事の本題。実はパーシヴァル・ローウェルは、若い頃日本を訪れていた。しかも驚くなかれ、なんと我らが木曽御嶽に登ったという。

 ローウェル天文台を作る前、1890 年代、ローウェルは御嶽登拝の経験を綴った「オカルト・ジャパン、神々への道(Occult Japan or The way of Gods – An Esoteric Study of Japanese Personality and Possession)」という本を出版している。

 副題を訳すと「日本人の人格的特徴および憑霊現象に関する奥深い研究」ということになるだろうか。ただ御嶽に登っただけではなく、行者や御嶽教信者たちの様子を真剣な眼差しで観察していて、特に「御座(おざ)」という憑霊(ひょうれい)儀式について詳しく報告している。

 御嶽信仰の基本になっているのは、御嶽信仰のある人の肉体が滅びると、その人の魂がお山(御嶽)に帰り、そこで永遠に生き続けるという考え方だ。

 当然ながら、過去に亡くなった人たち、特に各自の祖先もお山で永遠に生きている。だから「心を込めて呼びかけさえすれば、いつでも現れて語りかけてくれる」というのが「御座立て(おざたて)」という儀式の基本的な形であり、超常現象でも何でもないということになる。

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