2018年5月15日 シラカンバとダケカンバ

 五月も中旬。もう雪は降らないだろう。春の日差しも暖かい旅館御岳のロビー前庭。軒下に通気孔が並んでいる。ちょっと近づいてみると・・・。

 いたいた、イワツバメ。今年も濁河温泉にイワツバメが飛来した。毎年のことなのだが、なんだかとても嬉しい。飛翔スピードが速いので、飛んでいる姿を撮影するのは至難の業。泥のようなものを口に含んできて、自分の巣に塗りつけてはまた飛んで行く。それをつがいの二羽で繰り返すうちに、巣が少しずつ大きくなる。

 さてここからは、今回のメインテーマであるシラカンバとダケカンバについて。

 この写真は日和田高原で撮影したもの。この地の環境がよほど白樺に向いているのだろう。他の樹種はほとんど見られず、白樺がびっしりと密生している。見事な群生だ。白樺の群生地としては北八ヶ岳の東麓にある八千穂高原が有名だが、日和田の白樺も美しさでは引けを取らないと僕は思っている。

 白樺、青空、南風・・・。千昌夫が歌った「北国の春」の歌い出しだ。樹皮が白く美しい白樺は、いかにも高原らしい風景を作り出すので、昔から歌詞に良く現れる樹でもある。どんな樹種でも芽吹きは美しいものだが、白樺は真っ白な樹皮に明るい緑の葉が映えて、特に空が青いときには独特のすがすがしい雰囲気を醸し出す。

 その白樺(シラカンバ)とダケカンバは、同じカバノキ科カバノキ属に含まれる近縁種。どちらも高原に見られるが、白樺は標高1500メートルまで、一方ダケカンバはそれより高く森林限界まで自生すると言われる。

 でも実際は標高が1500メートルをかなり超える場所でも白樺をよく見かける。御嶽山麓の標高1800メートルに位置する濁河温泉では、明らかにシラカンバとダケカンバの両方が自生しており、完全に混在している様子を見ることができる。

 上の写真では、中央が白樺で右奥に見えるのがダケカンバ。シラカンバの方は芽吹きが見られるが、ダケカンバは全く芽が出ていない。

 幹を見ると、樹皮の様子が大きく異なる。上がダケカンバで下がシラカンバ。ダケカンバの樹皮は少し褐色がかかり、薄く剥けている。一方のシラカンバは真っ白で美しい樹皮を持つ。

 この二つは近縁種なのだが、その性質は大きく異なる。シラカンバは生命力が強く成長が早い。だから他の樹種を押しのけて群生する。その代わり、寿命は30年ほどと短い。一方のダケカンバは200年以上生きるものもあると言われている。進化の過程でシラカンバとダケカンバがどのように枝分かれしたのか興味深い。

タイトルとURLをコピーしました