夜空の話をする前に、明け方の東の空に見える金星に触れておきたい。金星はこの時期 -4.5 等で非常に明るく輝いている。金星の英語名はヴィーナス(Venus)と言い、これはご存じ美の女神。ギリシャ神話におけるアプロディテも同一人物(?)と見なしてよい。ところで女性を表す ♀ という記号、実はこれヴィーナスを指す記号なのだとか。
さて金星の呼び名だが、ヴィーナスの他に金星のことを「ルシファー」と呼ぶことがある。これは「明けの明星」限定で、夕空に見える金星をこう呼ぶことはない。カトリック教会ではミカエル、ルシファー、ガブリエルの三人の天使を、天使の中でも特に位の高い大天使としている。その一人であるルシファーが堕落して悪魔(サタン)になったらしい。明けの明星を悪魔と呼ぶのもちょっと気が引けるが・・・。
ルシファーが「明けの明星」に限定されていたとすると、昔の西洋人は「明けの明星」と「宵の明星」が別の星だと思っていた可能性がある。当然ながら、昔の日本人も別の星だと思っていたかもしれない。このブログを読んでいる方はもちろん同じ金星であることを知っている思うが、念のために中学校の理科を復習しておこう。
金星が太陽からあまり離れることなく一年にほぼ一回のペースで「明けの明星」と「宵の明星」を繰り返しているのは、金星が地球より内側の軌道で太陽の周りを回る「内惑星」だから。今月は明けの明星として早朝に見えている金星も、夏にはまた宵の明星として夕方の西空に輝くようになる。
1月23日の朝には-4.5等の金星と-2等の木星が東の空に並んで見えるので、早起きが得意な方はぜひ見て欲しい。
さてここで、いつものように夜九時頃の星空について。
夏の大三角が西の空に沈むと、東の空には冬の大三角が均整のとれた姿を見せる。夏の大三角が二等辺三角形なのに対して、冬の大三角はほぼ正三角形。しかもそれぞれの星が明るくて見ごたえがある。特にシリウスの -1.46 という明るさはほとんど惑星並み。真っ白な御嶽山の頂上からシリウスが昇ってくる姿はなかなか壮観だ。
シリウスについてはこちらも参照 → 冬空に輝くシリウス
大三角を構成するのは、それぞれオリオン座のα星ベテルギウス、おおいぬ座のα星シリウス、こいぬ座のα星プロキオンだ。天の川もすぐそばに見えており、全天で一番賑やかな部分かもしれない。星の色も、青白いシリウスに対してオレンジ色のベテルギウス。そして暗い晩には肉眼でもみえる「オリオン大星雲(M42)」は、屋上天文台における不動の一番人気だ。