ちょうど二ヶ月前に、「懐かしい昭和の森林鉄道(Forest Railway Revival Project)」という記事で森林鉄道プロジェクトについて紹介した。王滝村では少しずつプロジェクトが進行中で、レールの敷設作業がほぼ完成したところだ。その敷設作業がとても貴重な体験だったので、記事にして残しておこうと思う。その前にちょっと「松原スポーツ公園」から見える御嶽山をリポートしよう。
五月には雪をかぶっていた御嶽山も、今ではすっかり初夏の姿になっている。
アップするとこんな感じ。松原スポーツ公園からの御嶽山は南西方向から見ることになるので、1984 年の長野県西部地震の時に起きた「山体崩壊」が写真の左下部分に噴火口のように見えている。この山体崩壊は、後に「伝上崩れ」と呼ばれるようになった。今では観光地になっている王滝村の「自然湖」も、この伝上崩れによる大規模な土石流で大滝川がせき止められてできたものだ。
頂上部分をさらにアップしてみよう。雪渓の上に見えているのが 2014 年の噴火時に半壊した王滝頂上山荘。一番高いところに見えているが剣が峰頂上と御嶽神社だ。現時点で利用可能な黒沢口の登山道は、この写真の右端から稜線を通って剣が峰に達する。手前の王滝頂上山荘からは、途中に危険箇所があって頂上に登ることができない。
さて、いよいよ本題のリンテツ敷設作業について。スポーツ公園の多目的運動場に運ばれてきたこのカラマツ材が、レールを載せる枕木になる。
まず最初に、枕木に防腐剤を塗る。しっかり塗っておかないと数年で腐ってしまう。
枕木の塗装が乾いてから、整地した地面に一定の間隔で並べる。
レールは重いので、こんな風にトロッコに載せて運ぶ。
レールを仮の位置に載せる。
枕木に固定する前にレールを曲げる。長年のリンテツ敷設経験を持つ親方の指導があって初めて可能となる作業。
カーブが急な箇所では曲げるのも一苦労だ。林鉄用のレールは今ではすべて中古なので、時には曲げすぎて折れてしまう不良品もある。
鉄釘(スパイク)を打ち込んでレールを枕木に固定する。これも慣れるまではなかなか大変な作業だ。
慣れないうちはハンマーがスパイクに当たらず、こんな風に枕木を破壊してしまうこともある。
スパイクでしっかり固定されたレール。まだ完成ではない。微妙な調整作業が必要。
特殊な水平器を使って、カーブに沿って一定の角度で垂直方向の微調整を行う。これにより、カーブを曲がるときには車両がわずかに傾斜しながら、スムーズに走行することが可能になる。
数年前に設置した古いレールとの接続作業。
ほぼ完成。最小限の計測器具を使うだけで、鋭い勘と経験だけでこんなにきれいにレールを作ってしまう親方には、全く脱帽だった。この技術が失われてゆくのはとても残念だが、時代の波に抗うことはできまい。
公園内で、今一番勢いがある植物と言えばタンポポだ。綿毛をたくさん飛ばして、毎年どんどん増えてゆく。
今のところ新型コロナの影響で、今年の夏がどうなるのか全く分からない状態だが、少なくとも、今回敷設したレールの上を、足で漕ぐタイプのレールバイクで一周できるようになる予定。たぶん、自転車とはちょっと違う景色が見えるに違いない。