これが4月18日にNASAが打ち上げた“TESS”衛星の想像図だ。TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)とは「トランジット法による太陽系外惑星の探査衛星」という意味。
本体は4つの広視野カメラを備えた大型の宇宙望遠鏡で、以前も紹介したケプラー宇宙望遠鏡の後継機だ。2年間で全天の85%を探査する予定。
NASAの目的は、地球から300光年の範囲内にある系外惑星をすべて見つけ出すことだ。プロジェクトには日本も参加している。これほどの予算をかけてアメリカが系外惑星を探す、その意図はどこにあるのか。あのトランプ大統領も共和党も、このプロジェクトに同意しているという事実は大きい。
「地球や太陽系の起源が知りたい」という純粋に科学的な興味は、天文学や物理学、さらには生物学に関心のある者なら誰でも持っている。星のおじさんだってすごく知りたい。なにしろ、ターゲットとなる惑星が見つかれば、分光観測によって質量や密度、さらには惑星の大気がどのような成分でできているかまで調べることが可能なのだ。
プロジェクトの最終目的は、すばり「人類の系外惑星への移住」と見て間違いない。太陽系内には、人類が移住可能な惑星がないことはすでに明白になっている。かろうじて火星が移住のための練習台になるくらいだ。したがって人類の一部は、本気で太陽系からの脱出を模索し始めているのだ。・・・いよいよである。
太陽系を脱出して、恒星間を旅行する亜光速宇宙船で第二の地球に移動するという夢の具体化について、ちょっと考えてみよう。
例えば、反物質の利用などによって、光速の90%まで恒星船を加速することができたとする。相対性理論によると、その場合の恒星船内部の時間経過は、地球に留まっている人の約半分になる。つまり、100光年の距離にある系外惑星に到着したときも、船内の時間では50年しか経っていない。
恒星船内に地球上と同じ重力を再現し、快適な居住空間を作り出し、さらに十分な食糧も確保できたとする。さらにさらに、人間がずっと活動しているのは大変なので、体温を下げて仮眠(冬眠?)状態にする技術がしっかり確立されたとする。旅行している人間にとって20年は長いので、低温生命維持装置の助けを借りて寝て過ごす。ちなみに、人体を冷凍して解凍するのはたぶん無理。
それと、恒星船が金属でできていて、さらにその制御に電子部品からなるコンピュータが使われていることを忘れてはならない。強烈な宇宙線によって機械は急速に劣化するのだ。そんなこんなで、恒星間旅行は40年、つまり船内の時間で約20年というのが妥当な限界だろうと僕は見ている。
おそらくNASAは、だいたい15光年という範囲内にターゲットをしぼって、第二の地球の候補惑星を本気で探査すると思う。もちろんその場合、「人間が行って帰ってくる」ことは想定していない。片道切符の移住である。何となくワクワクするような、でも倫理的な問題がいろいろ絡んできそうな、微妙な展開だ。おそらく男女同数になる乗組員の人選は困難を極めるだろう。
なにしろ、移住先からの電波(光と同じスピード)が地球に届くまで何十年もかかるのだから、あっちの惑星で果たしてうまくやっているのかどうか、情報を得るのにもかなり時間がかかる。まあ、後のことは出先にお任せ、ということになるんだろうな。
世界では、北朝鮮やイランの問題、それに過激組織によるテロ事件などに注目が集まっている。地球温暖化による異常気象も、我々にとって身近な問題。しかし実はそれよりもっと重大な、人類にとって歴史的な一歩になるかもしれない“TESS”の打ち上げが、この四月にはあったのだ。
TESSは、今後約半年をかけて軌道の微調整を行い、月の重力を利用したすごく長くて非常に安定した楕円軌道(月共鳴軌道という)に投入される。運用期間は2年間。これからの2年間に人類の移住先が決まるかもしれないと思うと非常に楽しみ。