夏と冬には3個の一等星による「大三角」が星座を探す目安となる。しかし春の場合は、北斗七星から延長した「春の大曲線」で星座を見つける方が分かりやすい。
北斗七星のひしゃくの柄を延ばした先で明るいオレンジ色に光るのは、うしかい座のアークトゥルス。全天でシリウスに次いで二番目に明るい恒星だ。地球からの距離は約36光年と近い上に、太陽の25倍もの直径を持つ巨星である。
曲線をそのまま延ばすと、乙女座のα星スピカが見つかる。こちらはアークトゥルスとは対照的に青白い光を放っており、高温の星であることが分かる。観測によるとスピカの直径は太陽の約8倍、表面温度は摂氏2万度を超えるという(太陽は約6000度)。距離が約250光年と遠いため、一等星の中では明るい方ではない。
春の屋上テラスからは御嶽山の上にこの2星が美しく輝いている。この時期、木星と土星が姿を現すのは夜半過ぎになるので、星空観察の時間(20:30~21:30)にはまだ見えない。したがって望遠鏡で見られるのは、ふたご座のM35、かに座のM44といった星団になる。もちろん月が出ている晩にはクレーターをゆっくり観察。4月には22日から27日の数日間が月の観望好機となる。
ところで、月や惑星などの明るい天体を見るならわざわざ御嶽山麓まで来る必要はない。東京や名古屋などの市街地でも十分に見られる。せっかくこんな山奥まで来てもらったのだから、白々と広がる天の川や星雲星団の神秘的な姿を見て欲しい。
そこで、星が目当てでうちの旅館に来られるお客様に僕がいつも強調するのは「月齢」のこと。もちろん天候に恵まれることが一番なのだが、それはあくまでも運の善し悪し。その一方で、月齢さえしっかり押さえておけば、天の川が見られるチャンスが大きくなる。
簡単に言うと、いくら天気が良くても満月の前後十日ほどは満天の星空や天の川が見えない。満天の星空が見えるのは、月の光に邪魔されないときに限られる。それは新月の前後二週間ほど。4月は新月が16日(月曜日)、満月は30日(月曜日)なので、4月8日(日曜日)から22日(日曜日)までは真っ暗な夜空で天の川や流れ星を楽しむことができる。
さて、今年は火星の大接近もあり、その他にもいろいろとおもしろい天文現象がある。惑星の中で一番先に見ごろを迎えるのは木星。今年の木星は天秤座にあるので、星空観察の時間に木星が見られるのは5月に入ってからになりそう。それまでは、西に沈み行くオリオン座や双子座、東の空に昇ってくるかに座、しし座などから星雲や星団を探して見ることになる。
冬の星座が沈んでしまうと、しばらくは天の川が地平線付近に来てしまって見えにくい時期となる。もちろん夜空にはいつでも見る対象はあるのだが、一般受けする木星、土星、火星、そして夏の天の川が見られるまで、しばらくはちょっと寂しい時期が続く。
そんな中でも、星のおじさんはお客様が楽しめるようにいろいろ工夫しているので、是非とも屋上テラスまで足を運んで欲しい。