九月・十月の星空

9月の新月:10日

 したがって21時頃に満天の星空が見られるのは9月3日~15日ごろ。

10月の新月:9日

 したがって21時頃に満天の星空が見られるのは10月2日~14日ごろ。

 中秋の名月は9月24日。ただし満月はその一日後の25日となる。
 月面のクレーターを見る好機は、9月も10月も15日から20日頃ごろ。

今年の秋の天文現象

 屋上天文台が開いている時間、南の空には先月に続いて土星と火星が良く見える。月がなくて暗い晩に、秋の空で主役となるのは天の川に点在する散開星団とアンドロメダ銀河だ。夏の大三角が西に傾くのと同時に、東の空からはギリシャ神話の主役である星座が次々と登場する。

北東の空には秋の星座

 均整のとれた四辺形の「ペガスス座」に続いて、アンドロメダ、カシオペア、そしてペルセウス座が次第に天頂近くまで昇ってくる。ペガススの四角形と言わず「四辺形」というのは四星のうち一つがペガスス座に属していないから。

 秋の空を代表するこれら四つの星座は、ギリシャ神話の中でもお互いに深い関係にある。まず、カシオペアはアンドロメダ姫の母親である。そのカシオペアが自分の美貌を自慢したため、海の神ポセイドンの怒りを買い、娘のアンドロメダを海の怪物ケートスへの生け贄として捧げなければならなくなる。

 そこで登場するのが、勇者ペルセウスだ。大神ゼウスの助力を受けたペルセウスは、ゴルゴン三姉妹の一人であるメドゥーサを退治する。そして首を切られたメドゥーサの血の中から生まれた天馬ペガススにまたがって、鎖で繋がれていたアンドロメダ姫が怪物に食われてしまうのを、間一髪で救ってこのお話のヒーローとなる。

 ペガスス座の四辺形の一角をなし、天馬のちょうど腹の辺りにある星は名前をアルフェラッツといい、アンドロメダ座の α 星となっている。四辺形の一部を隣の星座から借りている形だ。アンドロメダ座のアルファ星なのに、アルフェラッツという名前は「うまのへそ」という意味らしい。

 と、ここまで読むと、当然ながら今回の主役は鎖につながれた美しいアンドロメダ姫だと思うだろう。しかし星のおじさんはこの神話には大いに不満がある。第一、エチオピア人だったはずのアンドロメダが、多くの絵画では明らかに西欧の白人と分かる色白美人に描かれている。まあ、神話自体が作り話なので、本物が白人だったのか黒人だったのか論じても意味がないのだが、何となく気分がそがれる。

 そこで今回僕が取り上げるのは「くじら座」。アンドロメダ姫を襲おうと海から現れたといわれるこの怪物、一体何者なのか。

 星座図館などに描かれている「くじら座」の正式名称を Cetus(ケートス)という。語源はもちろんギリシャ語で、アザラシやセイウチ、鯨など、海の哺乳類、つまり海獣全般を指す言葉だ。だから、特に鯨(ホエール)というわけではない。おそらく、そうした海獣が巨大化した海の化け物という設定なのだろう。この絵を見る限り、鯨というよりもセイウチかトドに近いようだ。

 さて、カシオペアやアンドロメダなどの言わば神話の主役となる星座は、天の北極周辺に集まっている。一方、くじら座はというと、黄道(太陽の通り道)よりさらに南側にあって、特に明るい星もなく、中天を這うように進む。不気味な怪獣そのものだ。

 そして「鯨の心臓」の位置にあるのが、有名な脈動変光星のミラ。この型の変光星は、それ自体が収縮と膨張を繰り返すことで見かけの明るさが大きく変わる。分類としては老齢期を迎えた赤色巨星で、オリオン座のベテルギウスもこのタイプだ。

 上の写真は NASA のハッブル宇宙望遠鏡がとらえたミラの姿。まん丸ではなく、さらにガスや塵を吹き出している様子が見える。大爆発を起こして白色矮星になる寸前なのだ。ちなみに、今年の12月には極大を迎え、2等星の明るさになる。屋上天文台でも良く見えるはず。

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